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2008-10-05:初稿

殺人メロディーを聴く犬! その9

神代警視正、橘警部、船村警部補、桜井警部補、紅林警部補、吉野巡査長、そして叶警部補の鉄太郎をめぐってのやり取りが見どころです。

特捜最前線 195話 「殺人メロディーを聴く犬!」 その9

第58、特命課 (夕)
    叶が地図を示して一同に説明する。
   「鉄太郎が酔ッ払いにひどい目にあっていたのがここ (A) ・・・・・・ (十キロほど離れて) はじめてあいつをみたのがここ (B) です ・・・・・・ さらに二十キロばかり離れたここが殺人家現場 (C) ・・・・・ そして、約十キロ西のここがガイ者の家ですが、ごらんのように、現場 (C) からここ (B)、ここ (A) ・・・・・ ほぼ一直線を引くことができます。
    地図に線を引く叶。 見ている一同。

   「鉄太郎は事件当夜、ガイ者と一緒に家を出ました。 そしてここ (C) で主人が殺される。この時間、近所の住人が激しく吠える犬の声とすぐそのあとで犬の悲鳴を聞いています。 おそらく鉄太郎は犯人に吠えかかり、逆に追い払われたんでしょう。 しかし、数日后には同じ場所に戻って来て飼主の死を悼んだあと・・・・・・・」
   「オイ一寸待てよ。 まさかお前、犬が飼主の仇を討ちに行ったなんて云い出す気じゃないだろうな」
     叶、静かに橘を見る。
   「そうは云ってません。 鉄太郎は、いろんな場所でさんざんひどい目に遭い、空腹ともたたかい乍ら、少しずつ少しずつ、犯人の臭いを追ってここ(A)まで来たんではないかと・・・・・・」
吉野  「よせよ、同じことだ」
    少しばかり 白けた空気が流れる。

   「おれは鉄太郎を信じます。 この方向 (CーBーAの線上) 又はこの (A) 近くにホシはいると信じます。
一同  「・・・・・・・・」
神代  「いや、頭からばかにはできんぞ。 アメリカには飛行機で引越した飼主の後を追って3300キロも移動した犬の記録がある。 フランスには飼主を殺した犯人を100キロも追って噛み殺した犬の話かある」
吉野  「しかしそりゃ血統書つきの名犬のハナシでしょ? あの犬はただの駄犬ですよ」
   「・・・・・・ 鉄太郎の頭の良さはおれが保証します」
紅林  「だがな、お前の推理はあまりにもドラマチックすぎやしないか?」
桜井  「仮にお前の云う通りだとする。 では鉄太郎は何故すぐにホシの匂いを追わなかった? 匂いは時がたつほどに薄れる。 それを同じ場所にとどまって一ヶ月近くも無駄にした。 何故だ?」
   「犬の追悼会なんて話は通らんぞ。 お前が最初に出逢ったときにしてもだ、ホシの匂いを追う犬が雨宿りしてたりするか?」
   「あれは腹が減って動けなかったんです!」
船村  「その動けない筈の犬が、翌朝にはちゃんと居なくなっていた」
桜井  「それにだ、顔を見られた位で犯人が鉄太郎を殺さねばならん理由がどこにある?」
   「・・・・・・・・」
船村  「犬好きのお前が入れ上げる気持ちは分るがね、鉄太郎は警察犬じゃない」
吉野  「はは、ま、そうノメリ込むな。 雑種は所詮雑種だ。 名犬にゃなれん」
    叶、キッと顔を上げる。
    突き上げる怒りを精一杯に抑えて叶は一人々々を睨みつける。

   「(低く)おれも ・・・・・・ 雑種です ・・・・・・!」
    臓腑の底から吐き出すように云うその一言に、家柄や血筋を気にする世間への憤怒がこめられている。
一同  「(はッとしたように) ・・・・・・・」

    −続く−


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